GX戦略・政策

経済安全保障とデータ主権
——国内DCシェアの現状と、地方分散型インフラが担う役割

SG
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前回は、AIデータセンター立地における電力の「質」の問題を論じました。
今回は、もう一つの構造的課題である「経済安全保障」と「データ主権(Data Sovereignty)」の観点から、地方分散型インフラの必要性を整理します。

国内クラウド基盤の現状

現在、日本のクラウドサービス基盤の相当部分を、米国系ハイパースケーラーが占めています。利便性の観点からは合理的な選択ですが、経済安全保障の視点では無視できない脆弱性があります。

2022年施行の「経済安全保障推進法」は、通信・電力・金融などを「特定重要インフラ」に指定し、外国資本による支配や特定の脆弱性に対するリスク管理を義務付けています。データが生成された主体が、その所在と管理権を自ら確保する「データ主権」は、今や国家レベルの政策課題として明確に位置づけられています。

2つの脆弱性(モバイル版) 脆弱性① 外資依存リスク 米CLOUD Actに代表される 外国政府によるデータ開示要求が 現実の法的枠組みとして存在する 医療記録・インフラ制御・原子力防災情報 等 脆弱性② 地理的集中リスク 国内DCの約9割が東京圏・大阪圏に集中 → 首都直下地震で単一障害点化 (詳細は連載B第4回) 銀行・マイナンバー・電子カルテ・物流AIが同時停止

図2. 日本のデジタルインフラが抱える2つの構造的脆弱性

具体的なリスクシナリオ

地方自治体が管理する医療記録、重要インフラの制御データ、原子力防災に関わる情報が、外国籍企業のクラウドを経由して処理される場合、その国の法域(政府によるデータ開示要求など)が作動した際に、日本側が100%自律的にデータを保護・管理し続けられるかという問いです。これは仮定の話ではなく、米国のCLOUD Actに代表されるような形で、すでに現実の法的枠組みとして存在しています。

さらに、データセンターが大都市圏に集中していることは、大規模災害時に「単一障害点」となるリスクを意味します。国内データセンターの約9割が東京圏・大阪圏に集中している現状で、首都直下地震が発生した場合のシナリオは、後の回(連載B第5回)で詳述します。

(SSFの見解)

SSFが推進する「電力マネジメントシステム連動型超分散型AIDC」は、この二つの脆弱性に対する技術的アプローチの一つです。高度な仮想化技術と高速通信ネットワークによって、地方に分散配置された中小規模AIDCを統合運用することで、データを地域内で処理完結させながら、一拠点被災時でもシステム全体を維持できる設計を目指しています。

薩摩川内市構想では、九州電力などと連携し、資本も事業主体も国内側で担う体制の構築を進めています。外資系大手が国内DC市場に参入する動きが加速する中で、重要インフラの所有・管理を国内事業者が担う体制の必要性は、今後さらに議論が深まっていくと見ています。

出典資料一覧

本連載の政策・制度に関する記述は、以下の一次資料に基づいています。

後藤

後藤 スミエ

SSF 理事

京都大学工学部・東京大学大学院修了後、P&G北米本社研究所、大手日系・外資系企業の経営企画を経て、SSF設立メンバーとして参画。GX・スマートシティ分野の自治体支援・補助金申請・PMOを担当。
個人サイト:bloomalot.jp/